Neulandのアウトライナー:ついでにファシリテーションとビジュアライゼーションと「黒」

neuland outliner 03_ファシリテーション文具案内

そういえばNeuland(ノイラント)の顔料系黒インク「Outliner(アウトライナー)」の話をまったくしていませんでした。当たり前のように使っていてもう手放せないというのに、いや、だからこそ改まって記事にするのを忘れていたというべきでしょうか。この記事では愛すべき漆黒インクをご紹介します。

前提

グラフィックレコーディングなどイラストを多用した手法では「主線を黒で描く」ことがよく行われています。bikabloなど一部の手法ではルールとされていることもあります。しかし一般的には決まりなどなく、何色を使うのも自由です。
私はグラフィックレコーディング習得の過程がヨーロッパ系のメソッド中心だったことや色の好み、そして「色が滲むのがとてもイヤ」というこだわりがあり、主線をアウトライナーで描いています。

Outlinerの特徴

ひとことで言うならば製図用インクのような、乾くと光沢が出る顔料インクです。耐水性・耐光性に優れており、長期間掲示しても色あせません。

白マーカー

紙の上に「乗る」インクなので、塗りすぎると紙が反り返ります笑(ふつうはこんなことはしません)。

ここが推せる

退色しない

(Neulandの色マーカーが退色しすぎるという話もありますが)とにかくいつまでも黒々しています。この黒々したのがいい、というのは単なる好みかもしれませんが。

にじみにくい

プロッキーなど、国産の水性顔料系マーカーだと上から色を重ねたときににじみやすいのです。

黒が滲む

NeulandのOutlinerは、インクが乾いたあとは上から淡い色を重ねてもにじみにくいです。といってもNeulandの染料系インク限定ですが……。
いくつかのマーカーで比較してみました。一番下1の「Neuland#100」はNeulandのふつうの色マーカー(染料系)の黒です。これがにじみ過ぎる。

neuland_outliner
Neulandカラーインク
プロッキー
プロッキー
紙用マッキー
紙用マッキー
アクアテック
アクアテック

プロッキーや紙用マッキー、アクアテックといった顔料系マーカーでぎゅうぎゅうと2回塗りするとさすがにインクを引っ張りますが、あんまりそこまでは塗りません。

留意点

No.Oneは複数買っておこう

主線をすべてこのマーカーで描くせいか、ものすごい勢いでインクが減ります。もともとNo.Oneの軸にキープしておけるインクの量が少ないからかもしれません。インクを満タンにしておいて、(私の密度で)だいたい模造紙3枚程度でインクがかすれているように思います。

Neuland Outliner

インクがなくなるときは突然かすれます。徐々に色が薄くなる、という感じではなく「1か0か」のような線になります。そういうところも個人的にはわかりやすくて好きですが。
このような特徴がありますので、No.Oneを使うのであればスペアのマーカーを複数持っておくことは必須です。

これは極度の心配性のたまもの。オレンジの軸がOutlinerです。

リフィルインクは必須

このようにみるみるインクがなくなりますので、取り寄せるときは必ず一緒にリフィルインクも購入しておくことをおすすめします。利用頻度が低いとインクがスポイトの中で固まってしまう、という声も聞いたことがありますが、私はいままで経験がありません。スポイトキャップのスペアも売っているので心配性な方は買っておきましょう。私は極度の心配性かつキャップを曲げて壊したことがあるので、もちろんスペアキャップを備蓄してあります……。

Neulandのインクは開封時に付属のスポイトキャップに取り替えますが、元のキャップも残しておくことをおすすめします。特にスポイトキャップのまま飛行機で輸送すると、気圧の関係でインク漏れを起こすことがあるようです。

Neulandの取り寄せ方法はこちらでご紹介しています。

いわゆるファシリテーショングラフィックでは

ちなみに、いわゆる「模造紙に書くファシリテーショングラフィック」はメインテキストには黒を避けることが多いようです。いちばん強い色なので、書き込み過ぎてわけがわからなくなったときに決定事項などを改めて上からなぞる、などの使い方ができます。その時のためにとっておく、という感覚でしょうか。

黒による文字の記録は、見て平凡で注意を引きつけないのであまり使いません。

世田谷まちづくりセンター『参加のデザイン道具箱 PART-3 ファシリテーショングラフィックとデザインゲーム』、p.28

(ホワイトボードとは)対照的に、紙に多色の水性マーカーで描く場合は、せっかくカラフルな色がそろっているのですから、なるべく黒以外の色を使いましょう。黒が多くなると、ファシリテーション・グラフィックが重くて硬い雰囲気になってしまうからです。

堀公俊、加藤彰『ファシリテーション・グラフィック』、日本経済新聞出版社、p.69、カッコ内は当ブログにて補足

黒は地味な色ですが、青、緑、茶、紫を主役にしていると、いざ黒を使ったときにとても存在感が出てきます。黒は「ここぞ!」という一言を書くときに使ってみてください。

堀公俊、加藤彰『ファシリテーション・グラフィック』、日本経済新聞出版社、p.70

bikabloはビジュアライゼーションのインパクトと構造化のために黒で主線を描く、と定義しています。黒の持つ強さは共通していても、用途によって使用頻度が異なるのが興味深いですね。

A black line and colored surface – this is the principle that paved the way for the century-old culture of comic strips. Thus you should make all of your outlines bold and black. This will make your visualizations striking and well structured. Only then should you use color.

Martin Haussmann『UZMO』 p.53
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